2019年7月18日木曜日

テレビでオペラを観ないバカ。

 私が、オペラを始めて観たのは、テレビで、でした。
1956年(昭和31年)9月29日のことです。自宅のテレビでなく、蕎麦屋の棚の上に載せてある小さな白黒テレビで観ました。
 観たのは、NHKが招いた第一次イタリアオペラ団の、東京宝塚劇場における初日の公演、ヴェルディの『アイーダ』でした。
 なぜ、それを観たか、というと、私の親友が出演していたからです。
 どういう役で出演していたか、というと、第二幕凱旋の場面で、登場するエチオピアの奴隷たちの一人として、出演してたのです。
 その親友というのは、当時私が学生生活を送っていた、世田谷区桜上水にあった愛知県人会館で、当時東京芸術大学の油絵科の学生で、同室だった K君が、「今度俺オペラにでるからな、テレビで放送されるから、見てくれ」と言うことで、近所の行きつけの蕎麦屋に頼み込んで、放送時間帯に、見せてもらった、というわけです。
 これが、日本のおける、そして、資料によると、世界最初のテレビオペラ中継だったようです。
 NHKが、大相撲のテレビ中継を始めたのは、1953年(昭和28年)夏場所。
甲子園の高校野球中継を始めたのは、翌年の1954年 (昭和29年)です。
 だから、NHK としては、テレビ中継の技術は、すでに持っていたわけです。
 しかし、当時は、テレビの中継はできたけれど、テレビ画像の録画技術は、まだ確立していませんでした。
 ですから、第一次、そして、1959年の第二次イタリアオペラ団の公演のビデオ映像は残されていません。(そのはずなのに、これらの公演の DVD が発売されているのが、不思議)
 ただし、公演の一部は、映画撮影フイルムで残されています。そして、音楽は、FM録音で残されています。
 YouTube に「NHK思い出のイタリアオペラ公演」が upload されています。
https://bit.ly/2XYDY2C
 1961年(昭和36年)の第三次イタリアオペラ公演からは、テレビ中継が録画され、何度か再放送もされました。後に、DVD で発売もされています。
 実は、私は、この時の初日の9月28日に Mario del Monaco と Renato Tebaldi の世紀の共演と言われた Andrea Chenier を東京文化会館で観ました。

そして、もうひとつAldo Protti 主演の Verdi Rigoretto も観ました。始めて、オペラを実演で観て、感激しました。
 そりゃ、やっぱり、オペラは実演でしょう、と人は言うでしょう。
 第三次イタリアオペラの演目の中に、Mario del Monaco 主演の I Pagliacci (道化師)がありました。
 これは、チケットが取れなかったのですが、東京から帰って、放送されたときに、家で観ることができました。
 当時の小さい画面の白黒テレビで観ました。
 実演を観たあとなのに、これを観た時、実演と同じくらい感激したのです。後に発売された DVD を観たときも、また同じくらい感動しました。
 今年(2019年)NHK Eテレで「らららクラシック」という Mario del Monaco と Maria Callas を取り上げた番組で、I Pagliacci の「衣装をつけろ」のアリアの場面が放映されました。やっぱり、ぐっと来ました。


 これよりのちのことです。Laser Disk で海外のオペラ劇場の上演のカラー録画が出回り始めた頃です。村田武雄という著名な音楽評論家の方が、晩年身体不自由になって、劇場でオペラ観劇ができなくなって、止むを得ず、Laser Disk でオペラ観劇をするようになられました。
 そうしたら、オペラ歌手というのは、顔であんな素晴らしい演技をしているのか、と、今まで劇場で観ていたときには気がつかなかったことをいろいろ発見して、実演とは違った観劇を味わった、ということでした。

  このように、劇場へ行かなくても、劇場体験と同じではないですが、それに勝るとも劣らないオペラ体験をすることができるのです。
 そして、この後に紹介するように、テレビでオペラを観る機会は、近来ますます豊かになっています。また、テレビでことできる鑑賞法もあるのです。

 そんな時代に、オペラはやっぱり、劇場で実演を観なきゃ、と言って、テレビでオペラを観ようとしないなら、それは、バカじゃなかろうか、というのが、今日のお話でした。
 ここで、テレビでオペラを観る、というのは、何も放送されるのを観るというのでなく、録画したり、DVD/BD で発売されているのを、テレビ画面で観る、ということも含んでいます。
 また、YouTube にあるオペラ動画を、テレビの大画面で観る、というのも含んでいます。


1 件のコメント:

  1. WOWOWのやった「ザ・オペラハウス1966-ウェストサイド狂騒曲ー」は面白かった。旧メトが今のメトへ移転するドキュメントだが、オペラハウス建設は街づくりであり、国家的威信の問題であることが詳しく描かれている。日本のオペラハウス建設に、これだけの配慮があっただろうか。「ウェストサイド・ストーリー」を書いたバーンスタインが、スラム街を開発して建設されたリンカンセンターの落成式で指揮をしているのも面白い。

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